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話題の「残業代ゼロ法案」とは?高度プロフェッショナル制度が実施されると変わるポイント

 2018年5月30日  Posted by  編集部


高度プロフェッショナル制度は、その内容が「残業代ゼロで労働者を働かせることにつながるのでは?」という観点から「残業代ゼロ法案」と呼ばれています。高度プロフェッショナル制度の内容と、労働者にもたらす影響をご紹介します。

残業代ゼロ法案=高度プロフェッショナル制度とは?

「残業代ゼロ法案」と呼ばれる高度プロフェッショナル制度とは何なのでしょうか? その内容をご紹介します。

高度プロフェッショナル制度とは

高度プロフェッショナル制度とは、年収1075万円以上の収入のある専門職に就く労働者を労働基準法の対象外とする制度と関連する規定を指します。現在考えられている専門職とは(2018年5月25日)、労働時間と成果の関連性が低いと考えられる以下の5職種になります。

  • 金融商品の開発業務
  • 金融商品のディーリング業務
  • 企業・市場等の高度な分析にあたる、アナリスト業務
  • 事業や業務の企画運営にあたる、コンサルタント業務
  • 研究開発業務

本内容は2006年より法案提出が繰り返されながらも、野党や過労死遺族の反対を受けて議論が続いてきました。そしてやっと、今年、5月25日に高度プロフェッショナル制度を含む「働き方改革関連法案」が衆議院の委員会で採決、与党などの賛成多数で可決されました。

高度プロフェッショナル制度が生まれた背景

日本には「労働基準法」があり、労働条件の基本条件が法律によって定められています。労働基準法は日本で労働するすべての労働者に適用されるもので、その雇用形態を問いません。

労働基準法は使用者と労働者の関係を正しく保つことを目的としてつくられており、一般的には過労などの問題を是正する効果があります。

高度プロフェッショナル制度は、高年収かつ専門職に就く労働者を、特例としてこの労働基準法の適用外とします。専門職は、労働基準法の基本の考え方となっている“労働時間”に比例して成果がもたらされるとは限らない業務が多いです。

とすると、時間を基準に収入を決めることが合理的ではない、という見解が高度プロフェッショナル制度に結びつきました。

高度プロフェッショナル制度=残業代ゼロ法案

高度プロフェッショナル制度は内容が開示されて間もなく「残業代ゼロ法案」という異名が浸透しました。労働時間規制対象から外すということは、残業をいくらしても収入には反映されないということです。

収入や職種でその対象は制限されています。しかし、時間を基準としない労働は正確な基準を設けることが難しく、悪用すれば残業代を度外視した労働を強いることにつながる、という反対意見が多く見受けられます。

残業代ゼロ法案が通るとどうなる?労働者のメリットとデメリット

残業代ゼロ法案を労働者の視点から見たとき、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

労働者から見たメリット

残業代ゼロ法案の対象となる労働者は、与えられたミッションをクリアすることが収入を得るための条件となり、労働時間という条件がなくなります。つまり、与えられたタスクを終わらせれば、一日3時間程度のみ出社するスタイルでも構わないですし、休みを自由にとることもできます。

柔軟に労働時間を振り分けることができ、自身の集中できるもっとも効率的なスタイルを確立することにつながります。また、家族との時間を大切にすることも可能だという意見もあがっています。

労働者から見たデメリット

タスクが一日の労働時間で終わらない分量だった場合、残業をいくらしても収入に加算されることはありません。極論を言えば、過剰なタスクを与えられ続ける場合、収入は増えずに残業時間だけが増え続ける労働環境になるということです。

残業代ゼロ法案が通ると誰が一番嬉しい?

残業代ゼロ法案は、生産性の高い状態を維持して働ける人にとっては喜ばしい内容でしょう。上でも説明したとおり、時間に縛られないということは、1日の出勤時間が3時間程度でも給与には影響しないということです。

なので、現在のタスク量を8時間以内で終わらせることができれば、実質的な労働時間の削減となります。

また増えたプライベートを活用して、仕事につながるセミナーや外部イベントへ積極的に参加することを希望していた人や、家族との時間を大切にしながら働きたいと願っていた人は計画が立てやすくなるでしょう。

残業代ゼロ法案で「働かせ放題」になる?残業代ゼロ法案の3つの問題点

残業代ゼロ法案はなぜ、多くの人から反対されているのでしょう? 残業代ゼロ法案の問題点について考えます。

過剰労働に結びつく可能性がある

残業代ゼロ法案では、年収と職種で基準を設けています。その中に健康を害する働き方を強要させないよう配慮したルールは、ほとんどありません。ひとつあるとしたら、休日や労働時間などに関する以下の4つの条件のどれかを選ぶように、定められてはいます。

とはいっても、あくまで「どの条件をえらぶか?」は企業側にゆだねられています。これでは、労働者の負担が過剰になることを防ぐとは言い難いものです。

  • 勤務間インターバル制度と深夜労働の回数制限制度の導入
  • 労働時間を1ヵ月又は3ヵ月の期間で一定時間内とする
  • 1年に1回以上継続した2週間の休日を与える
  • 時間外労働が80時間を超えたら健康診断を実施する

したがって、「成果による年収を」という言葉の裏側には「成果を出すまでは終わらない」という意味が隠されているということであり、過剰労働を助長する可能性が十分にあります。

チームワークを重んじる日本の労働環境では矛盾が発生しやすい

残業代ゼロ法案は、成果を基準とした評価をとる以上、個人単位での成果を明確に示すことが大切です。一方、多くの日本企業は組織として成果を出すことが一般的で、チームでの助け合いを促す傾向があります。

残業代ゼロ法案の対象となりながら、個人の評価に関わらないチームで発生した業務を求められるかもしれません。しかし、あくまで個人の成果に対する報酬のため、チームのために行った労働時間に対しては報酬を得られないというケースが多発することが予想されます。

将来的なデメリットが未知数である

残業代ゼロ法案が一度決まってしまえば、今後その詳細が変わることもありえます。たとえば、基準となる年収1075万円は法律に記載されているわけではありません。

将来的に、政府の解釈次第では適用となる年収の条件が引き下げられてしまう可能性もあります。もしかしたら、労働者の多くが残業代ゼロ法案の対象となるかもしれません。

また、対象となる専門職に就いた労働者のモチベーションが低下する可能性もあります。タスクが8時間以内に必ず終わる職場でもない限り、これまで残業していた時間がタダ働きになってしまいます。

これでは、選択する権利が労働者側にあるとはいえ、今後対象となる専門職を志す人材が減る可能性もあります。

残業代ゼロ法案との向き合い方

このように、残業代ゼロ法案は本来目指している目的とは裏腹に、課題を多く抱えている状態です。

法案の対象となるキャリアを志す人や、自身が条件に当てはまる可能性のある人は、内容を精査した上で、自身の働き方に良い影響をもたらすのかどうかを各自の労働内容に応じて考えてみましょう。


宿木雪樹

広報/企画分野での企業経験を経て、フリーランスへ。ニーズに応じた企画/執筆を担当。2018年1月よりMAMORIOチーフエディター。一緒に仕事した方を"幸せにする”がモットー。”幸せになる考え方”をコンセプトにしたブログ「宿木屋」運営中。

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